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大きな名前と小さな僕




人間の世界にも旧家名家というものがあるように、
我ら妖狐の世界にも似たようなものが存在する。
山城一族もそれにあたる。
そして人間と同じようにしがらみというものはやはり存在するのである。




山城一族。

妖狐族において知らないものの方が少ないであろう一族である。
今なお当主は我が父上、山城一太郎ではあるのだが、
その役目を果たしているのは僕の叔父上である山城二太郎である。

我が一族の役目というのはとあるやんごとない稲荷神社の稲荷神である。
元々我が父上がその役目を仰せつかり、今では弟にその役目を継いだ、と父上から聞いた。

500年ほど前に弟に役目を継いだのには理由があったようだ。
どうもその頃ちょうど僕の兄である総太郎が生まれたからと聞いた。

長きに渡って父上と母上には子宝が恵まれなかったらしく、
念願の第一子が兄だったそうだ。

つまりようやく出来た子供を溺愛したいがために弟にその役目を押し付けたのである。
叔父上も快く引き受けたようなので特にこれといった問題はなかったようだが。

しかし、稲荷神というものは案外大変な役目であり、役目を譲り渡した後も、
父上は何かと叔父上の手伝いをしていたようであり、
そんな父上の背中を見て、兄、総太郎は育ったらしい。

そのせいか、おかげか、兄もいずれは稲荷神にと思い育ったようで、
父上、叔父上の双方から稲荷神としての作法や、
稲荷神の役目を務めるために必要とされる神通力や妖力と呼ばれる力の使い方を学んでいる。

妖力というものが強まれば強まるほど、妖狐は多くのことができるようになる。
稲荷神として様々な人の願いを聞き届け、ほんの少しずつ叶えていくためには膨大な妖力を必要とする。
稲荷神社が大きくなればなるほどその妖力というのは必要になってくるのだ。

そもそも妖力というのはどのようなものかと言うと、神の力である。
我々妖狐というものはそもそもが神使なのである。

神様と言えども、すべての人間を常に見守るということは不可能である。
だからこそ妖狐や狛犬などの神使たちが神様に代わって人間たちを見守るのだ。

そして人間たちの願いを叶えるために神の力である妖力を使役するわけなのだが、
使役する神使自身が神の力に耐えられなければいけないのである。

つまり大きな稲荷神社の稲荷神になれるというだけでその力の証明であり、神使としての格なのである。

というわけでやんごとない稲荷神社の稲荷神になるために、
兄は神使としての修業を長年行っているわけなのだが、未だにその時は遠いようである。


「やあ兄さん」

「おお、元気にしていたか?」

「うん、元気だよ。兄さんの方こそ修行大変じゃない?」

「大変じゃないと言えば嘘になるが、満ち足りた毎日を送れているよ」

「そっか、満足しているみたいで何よりだよ」

「そうだ。最近ようやく尾が二本になったよ」

「本当かい?流石は兄さんだね。僕のほうはまだ一本さ」

「ははっ、流石にそう簡単に二本になられては兄としてはなんとも言えないからな。
 それにお前も一本とはいえ、随分大きくなっているみたいじゃないか」

「兄さんほどじゃないさ。今日は母上に頼まれて兄さんの様子を見に来ただけだから僕は帰るね。
 修行頑張ってね」

「ああ、わざわざありがとうな。京にもよろしく言っておいてくれ」

「うん、わかったよ。それじゃあまた」

「ああ、またな」


よく妖狐の格は尻尾に現れるというが、半分真実で半分嘘だ。
確かに尻尾に現れるのだが大事なのは本数だけではない。
尻尾が増えるメカニズムというものが存在するのだ。

そもそも妖狐というものは生まれ方が二通り存在する。
ただの狐が修行の末に妖狐になる方法。
こちらは妖狐のオリジナルというわけであり、真祖と言える。
もう一つは妖狐夫婦から生まれる妖狐である。
こちらは生まれた時から妖狐であり、親の本数を足して受け継ぐと言われている。
つまり親が一本同士であれば子は二本という訳だ。

もっとも、ある程度の年齢になり、妖力も高まった時に増えるので、
白面ちゃんや僕みたいなまだまだ半人前の妖狐では尾の本数が完全ではない。
現在の器に見合った量の妖力が本数として現れるのだ。

僕は父上も母上も真祖であるので、将来的には多くて二本なのだが、
白面ちゃんは父親のほうが真祖であるので、将来的には十本である。

ちなみに真祖の場合、どのようにして妖力を計るのかというと、
尾の大きさを見るのである。

尾が大きく立派であればあるほど格が高いと言われるのだ。
もっとも普段は不便であるし、隠している方が多いのではあるが。


「ただいまー」

「お帰りなさい!次兄さん、兄さんの様子どうだった?」

「ああ、元気にしていたぞ。お前にもよろしくと言われた」

「そっかー。兄さん元気にしてるんだ。良かった良かった」

「お前ももう少し頑張れば行けるようになるぞ。頑張ろうな」

「うん!私も早く変化がちゃんとできるように頑張る!」


まだまだ妖力を使うのが未熟なうちは人間変化をしても、尻尾や耳を隠し切れなかったりすることがある。
昔から、そのような幼い妖狐が見つかることはまれにあった。

今ではしっかりと変化が行えるようになるまでは人里へ降りることが禁止されるようになったのだ。
兄が修行しているのは稲荷神社であり、もちろん人が多くやってくる。
そのため妹はなかなか兄と会うことができない。


「僕も昔はそうだったなあ……」

「どうしたの?兄さん」

「いやなに、ちょっと昔を思い出してね」

「ふーん、そっかー……」


昔、僕がまだ小さい頃。
父上や叔父上の後継になりたいという兄の姿を見て僕は育った。
その頃の僕と言えば僕も兄のようになりたいとひたむきに頑張っていたように思う。

今ではどうだろうか?
山城一族の名に恥じないようになれているだろうか。


「山城一族……か」


このちっぽけな体に見合わぬほどの大きな名前を持った僕。


「僕は一族として何もできる気がしないな……」


そんなことを考えてしまうほどに僕はまだまだ半人前なのだ。


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