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五十年のお付き合い




僕らは義理人情というものが大好きだ。
もっとも僕らは狐であるからして、人情というべきなのかどうかは定かではない。
狐情というとどこかおかしな響きであるので、やはり人情で良いのだろう。
人間が狐と親しく過ごすというものはおかしいものであるが、
一期一会の出会いを大事にする狐というのもやはりおかしなものである。



今日も今日とていつものように、僕は大好きな白面ちゃんと会っていた。


「白面ちゃん、何をしているんだい?」

「これかい?これはね、あのおばあちゃんのためにマフラーを編んでいるんだ」

「おお、それはいいねえ。そういえば今日はあのおばあちゃんが来る日だったね」

「そうなんだ。でも本当は今日にでもマフラーを渡してあげたかったんだけど……この通りさ」

「まあ仕方ないよ。次の機会にでも渡せるといいね」

「うん。そうだねえ」


あのおばあちゃんというのは定期的に僕らが根城にしている神社にお参りに来てくれるおばあちゃんだ。
言うなればお得意様のようなものだろうか。

僕らはおばあちゃんと呼んだが、実の所彼女が小さいころから僕らは彼女のことをよく知っている。
彼女が何故お参りに来てくれるのかというと僕の父上が関係している。

その時の様子を詳しくは知らないのではあるが、
なんでも父上は彼女を助けたはいいが、狐であることがばれてしまったらしい。
そんでもってばれた後に根城としているこの神社に逃げ帰ってしまったものだから、
それ以来彼女は定期的にお参りに来てくれているのだ。


「それにしても君のお父上が逃げ帰ってからもう50年にもなるのかい?」

「そうだねえ。義理堅いねえ。有難いねえ」

「本当にそうだねえ……」


僕らにとっても50年はやはり長い。
なんせ大妖狐である白面ちゃんのお母さん、僕らの先生ですら1000歳ほどである。
200歳ほどの僕らなんてまだまだ坊ちゃんであると言えるのだが、あの人も50年は長いと言っていた。

なんでも、
『宮廷の者が食事に毒を盛っていただけというのに、勝手にわらわのせいにして石に閉じ込め、
 それも50年もの間ふきっさらしの状態でほっとかれて……もうあんな長い50年は過ごしとうない!
 もし、御堂に移してもらえなんだら200年以上もあの状態で……』

とのこと。
その後に、殺生石のせいだという毒素は本当は金山から毒素が川に流出していただの、
玄翁和尚が真実に気づいてくれて助けてくれただのという物語があるのだが、それはまた別のお話だ。

少し話が脱線してしまったが、この通り我ら妖狐にとっても50年というものは長いものである。
そんな長い間我らのために、正確には逃げ帰った父上のためにこんな遠くの神社に参拝してくれているのだから、
このおばあちゃんは本当にいい人である。
このおばあちゃんのせいで僕が人間を好きになったといっても過言ではない。


「お、噂をすればなんとやらだ。挨拶に行こうよ白面ちゃん」

「お、おい。編んでいる途中だというのに……まったく仕方ないな。片づけるからちょっとだけ待って」

「うんうん。白面ちゃんは優しいしかわいいなー。僕ここで待ってるよ」

「か、かわっ!?……むー、からかうなら行かないぞ!」

「そんなことしたらおばあちゃんが悲しんじゃうよ」

「君はまったく……本当にずるいやつだな」

「未だに返事をしない君ほどじゃないさ。ほら早く行ってきなよ」

「また君はそれを言う……。本当にずるいぞ……」


ぶつくさいいながらもようやく彼女は片づけに行った。
本当は私だって好きなんだけど面と向かうと……
という感じの内容を小声でぶつぶつ言っていたのが聞こえたが、
紳士な僕は聞かないことにしておいた。

というよりかは『僕が恥ずかしい中、正面から告白したというのに彼女はそんな風に澄んでしまうのがずるい』
といった、至極しょうもない僕の意地からであることは言うまでもあるまい。

彼女は片づけてきたついでに少し身支度してきたようだ。
普段二人の時じゃ見られない格好が見られて僕も嬉しい。
ここらへんはおばあちゃんのおかげだろう。ありがとうおばあちゃん。


「こんにちは、おばあちゃん。いつもありがとう」

「こんにちは、お元気にしていましたか?おばあちゃん」

「あらあら、子ぎつねちゃんたち。そちらもお元気?」

「うん、元気だよ。僕の父上も元気さ」

「そう、それは良かったわ。これいつもの油揚げ。みんなで食べておくれ」

「いつもいつもありがとうございます。本来は関係のない私の分まで……」

「いいのよいいのよ。私はあの方に助けられてからあなたたちのことが大好きなんだから」

「僕らもおばあちゃんのおかげで人間のことが大好きさ」

「あらあら、それはとても嬉しいことね」


いつも通り変な会話である。
僕らがおばあちゃんに狐とばれているのは父上のせいである。
父上が迂闊にも狐の姿で帰ってきた際におばあちゃんに追いかけられていたとも知らずに、
僕らに話しかけてきたせいだ。
その際に僕らは驚いてしまい、化けていた人間の姿から狐の姿に戻ってしまった。

しかし、おばあちゃんも変わった人で、大層驚いた後、これまた大層喜んでいた。

『こんなにもお仲間さんがいたんだねー!』と。

それから僕らはおばあちゃんと仲良くするようになったのだ。
もっとも当時は『おばあちゃん』ではなく『お嬢ちゃん』と呼んでいた。
そして時を経るごとに『お嬢ちゃん』から『お姉さん』へ、
そして『お姉さん』から『おばさん』へ、
そして最後に『おばあちゃん』というわけだ。

呼び名が変わる最初こそ戸惑ったものの、
我ら妖狐と違い年老いていく彼女をとても『お嬢ちゃん』と呼び続けることはできなかった。


「あら、もうこんな時間。今日もいっぱいお話できて良かったわ。私は帰らせてもらうわね」

「そうだね。途中まで僕らが送るよ」

「そうね。最近日が沈むのがめっきり早くなってしまったものね。私たちが近所まで送りますよ」

「あらまあ、それは有難いことね。じゃあお願いしようかしら」

「うん、任せといてよ。腐っても妖狐!安全は保障するよ」

「一番危なっかしいのは君だけどね」

「あらあら、まあまあ」


これもいつも通りである。
ただ単に別れが名残惜しいだけなのではあるが、いい口実になるのだからよいのだ。

僕らの生は長い。
なんせ妖怪である。
よほどのヘマをせぬ限り、思うままに生きることもできるし、
思うままに極楽浄土へもいけるというものだ。

もっとも極楽浄土へ行くにはそれなりの条件、というものもあるのだが。

つまり何が言いたいかというと、おばあちゃんは間違いなく僕らより先に亡くなってしまう。
しかし妖狐というのはそういうものなのだ。
そして人間というのはそういうものなのだ。
限りある人生だからこそ目いっぱい生きている人間の『生』というものが僕はたまらなく大好きだ。

200年ほどしか生きていない僕でもそれなりの人を見送ってきた。
そしてこれからも見送るのだろう。
それでよいのだ。

いつかまた、僕が極楽浄土へ行けた時にでも見送ってきた人たちにたくさんの土産話を持っていくために、
長く永く生きてみようと僕は思う。

そんな僕の隣に白面ちゃんが居てくれたら良いのにな、というのは僕のささやかな願いである。

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