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素直な天邪鬼




想いというものは伝えようとしても伝わらないものだ。
それは人間も妖狐も変わらない。
言ってしまったことへの後悔、言わなかったことへの後悔。
色んな後悔を人も妖狐も長い間してきている。
だからこそ本当の自分の想いを一生懸命に伝えるべきものなんだと私は思う。


総次郎とは長い付き合いだ。
生まれた時も同じぐらいであり、修業時代からずっと一緒にいる。
幼馴染というやつだ。
幼い頃は本当に何をするにも総次郎と一緒だった。


「きちんと変化できるようになった?」

「ううん、まだだめだね。どうしても尻尾か耳が残っちゃう」

「そっかあ……変化って難しいなあ……」

「でも大丈夫だよ。白面ちゃんは尻尾が増えてきたじゃないか」

「総次郎もきっとそのうち増えるから大丈夫だよ!頑張ろう?」

「……うん、そうだね」


あの時の総次郎のちょっとだけ泣きそうで、
ちょっとだけ嬉しそうなそんな笑顔を私は忘れられない。
当時の私は何も知らなかった。
だからこそあんな無責任なことを言えたのだと思う。

総次郎にとって、尻尾を増やすということはどれだけ大変なことなのか、
今の私にもわからないままだ。
そんなこと彼と同じ境遇にでもならない限りわかるはずがないのだから。

尻尾の本数というのはとてもわかりやすい。
だからこそ成長したと実感しやすいものであるし、
まだまだ頑張ろうとも思うことができる。

しかし、総次郎にはそういった『わかりやすい目安』というものがない。
変化もなかなかできず、尻尾も簡単には増えないため、成長したという証がない。

自分の進歩が実感できないまま頑張り続けるというのは余程の苦行なのではないかと今では思う。
当時の私は幼かった。そういえば言い訳になってしまうが本当に幼かったのだ。
まだ何も知らない子供だったのだ。


「やあ、何してるんだい?」

「やあ白面ちゃん。今日は母上の代理さ」

「私も一緒に居ていいかな?」

「もちろんだよ!ああ、嬉しいなー白面ちゃんと一緒になんて」

「もう!君ったらよくそんなこっ恥ずかしいこと言えるね!」

「白面ちゃんほどじゃないさ」

「え?私なんか言ったことあったっけ?」

「あれ?覚えてないのかい?僕は一生忘れないけどなあ」

「え……?」

「あれはそう、僕らの修業時代だよ。お互い名前を教え合って、
 ちょっとしたぐらいに変化と尻尾の話をしてたんだ。
 お互い変化はうまくいかないし、僕に至っては尻尾も増えないね、って」

「……っ!」


少しドキりとした。
総次郎もあのことを覚えていたのだと。
私が無神経にも彼の心を土足で踏みつけたであろう出来事を。
今でも私の心に刺さり続けている棘のことを。


「あの時は嬉しかったなあ……」

「…………はい?」

「え?白面ちゃん覚えてないの!?そんなあ……がっかりだなあ」

「いや、覚えてるけど……私が君に無神経なことを言ったことは」

「無神経?君は何を言っているんだい?」

「ええ!?どれだけ私があの時のことを後悔していたか……!!」

「えー後悔してたの?僕は嬉しかったのになあ」


おかしい。
一向に話が噛み合わない。
私の記憶が間違っているのだろうか。


「あの時が初めてだったんだよ」

「初めて?」

「本当に覚えてないんだね……」

「え?」

「あの時初めて……



僕を名前で呼んでくれたんだよ」



え?は?ええ?
名前で?名前で呼んだって?
そんな馬鹿なことが……


『総次郎もきっとそのうち増えるから大丈夫だよ!頑張ろう?』


あ……


「あああああああああ!!!!!」

「やっと思い出してくれたのかい。つまり最初の告白は君からだったと言ってもいいね。白ちゃん」

「い、今私のことを白って!でも私も総次郎って……ああ、もうどうすればいいのー!!!」

「あっはっはっは」


当人同士であっても認識のズレというものは生じてしまう。
私はあの時の記憶を総次郎に無神経なことを言ってしまった辛い記憶だと思っていたわけだが、
総次郎のほうは名前を呼んでもらえた嬉しい記憶だと思っていたわけだ。

おっちょこちょいな私は総次郎の名前を度々呼んでしまうのではあるが、
それについて後悔をしたことなどは一度もない。
むしろおっちょこちょいであることに感謝しているといってもいい。
天邪鬼な私には素直に気持ちを伝えることなどそう簡単にはできないのだろうから。



ただ少し、他人の目があるところではおっちょこちょいは発動してほしくないなと考えている私なのである。

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