Pollyanna

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頬の熱さは夏の所為


ひたひた
ひたひた

静かな廊下に奇妙な音がこだまする。
リノリウムの床は音をよく反響させる。

ひたひた
ひたひた

規則正しく鳴り響くその音は迷うことなくまっすぐ進む。
自分の行くべき場所を把握しているかのように。

間違いない。
これは足音だ。

どこに向かっているか?
そんなことはわかりきっている。
僕のいるこの部屋だ。

どうして、どうしてこんなことになっているのだろう。







ミーンミーンミーンと、
うるさいほどに蝉が鳴いている。
僕はこの季節があまり好きではない。
そもそもが何もしていないのに汗をかくというのが大嫌いなのだ。


久々に叔母の家……母の実家とも言うが、がある土地へとやってきた。
やはりここはとんでもない田舎だ。
電車も一時間に一本通っていればいいほうで、バスも言わずもがなである。

しかし、やはり田舎なだけあって自然は素晴らしい。
素晴らしいがため、ここまで蝉の大合唱が耳をつくのではあろうが。


「あぁ、暑い……」

「おいおい、今更それを言うなよ野々山。こっちまで暑くなってくるだろ」

「口に出そうが、出すまいが暑いのは変わらんだろ……」

「いーや違うね。意識するだけで倍は変わるね」

「この議論してるほうが暑くなるわ」

「そうだな……」


僕は友人である、長谷川と叔母の家まで向かっていた。
事の経緯はこうだ。


『はい、もしもし』

『あら?透くん?久しぶりねえ、元気にしてた?』

『ああ、叔母さん。お久しぶりです。僕は元気でしたよ』

『そう、それはよかったわ。それで透くんに用事なんだけど……』

『僕にですか?』

『ええ、今年の夏、姉さんとお義兄さんが……えーっと透くんの両親が一か月ほど出張なのは聞いてるわよね?』

『はい、もちろん。なんでも海外の災害支援に行かなきゃならないとか』

『ええ、そうよ。それでね、その間は透くんは家に一人でいることになるでしょうし、寂しいでしょうから
 よかったらうちに来ないかしら?』

『え?叔母さんのうちにですか?僕は大丈夫ですけど……』

『じゃあ決まりね!夏休みに入ったらすぐうちにいらっしゃい』

『ええ!?そんな急に……』

『それじゃ待ってるわねー』

『あのっ!』

『ツーツーツー』


とまあそんな経緯があったのだ。
そしてそのことを同じゼミの親友である長谷川に話すと、

『俺も連れてけ!』

と言ったのでそのことを叔母に話すと

『その長谷川って子は女の子じゃないでしょうね!?……あら、なんだ男の子なの。ならいいわよ』

とあっさり長谷川の同行が決まったのだ。


おかしい。
何かがおかしい。
ていうか電話でわざわざ長谷川が女ではないと確認してきたのはなんだったのだろうか。

拭いきれない不安感。
止めきれない汗。

汗の不快感から脱するためには叔母の家へ行かなければならないというジレンマ。

この暑さに抗いきれるわけもなく、ただただ叔母の家へと歩を進める僕と長谷川だった。


バス停から5㎞ほど、そう徒歩で一時間ほど歩いてようやく叔母の家、もとい母の実家に着いた。

『バス降りたら連絡頂戴。車で迎えに行くから~』

なんて叔母が言っていたが結局電話にも出ずじまいである。

長谷川と待とうかどうか数分ほど話し込んだが、
結局暑さに耐えきれないと判断し、
徒歩で向かうことにしたのだ。

おかげで頭から足先まで滝にうたれたかのように汗でぐっしょりだ。
ああ、早くシャワー浴びたい……。
そんな思いを抱えつつ、僕は呼び鈴をならした。


「はーい」と家の中から聞こえる女性の声、しかし叔母の声ではない。
はて?他に誰かいただろうかと思案してみると一人思い当たる。
従姉妹の冬華だ。確か僕より六つほど年下だったように思う。
以前あった時は彼女はまだ小学校三年生ぐらいだったと記憶している。
記憶の中の彼女からするとさぞかし大きくなったのだろうなあなんて考えていると、玄関が開いた。


…………。
なんていうか想像以上だった。
でかい、でかすぎるぞ。
いや、別に身長はそうでもないおそらく150㎝もないだろう。
むしろ小さい方だと言えるのかもしれない。
問題はそこではない。
エベレスト級の何かが胸部についているのだ。

いやそれ絶対男に揉ませてるだろ?そうじゃないとそんなに大きくなるわけないだろ?
そんなことを思ってしまうぐらいの凶器である。

僕の親友だった長谷川なんてずっと視線が彼女の胸に集中している。
いや僕もそうかもしれない。
だが彼女は僕の従姉妹である以上、長谷川てめえとは絶交だ。絶対に許さんぞ。


「あの……もしかしてにぃに?」

「あ、うん」


昔と変わらぬ呼び方である、昔も彼女はにぃに、にぃにと僕の後ろをついて回っていたように思う。
今思えば他の人もいっぱいいたはずなのに何故か彼女に懐かれていた。


「うわーーー!今日だったんだ!久しぶりー!」


そんなことを言いながら彼女は僕に抱き着いてくる。
やめなさい。その凶器を押し付けるのをやめなさい。
一応僕も純潔を守ってきた身の上。そんな凶器に抗えるわけがない。
今すぐ離れなさい。

おいてめえ長谷川、何こっちをにらんでやがるぶっ殺すぞ。


「と、冬華ちゃん。よかったら放してくれると助かるんだけど……」


そういうとばばっという効果音が出そうなほど俊敏に彼女は僕から離れて姿勢を正した。
ようやく興奮も落ち着いてきたようだ。
長谷川の殺意は収まらない。


「ご、ごめんねにぃに。久しぶりに会えてちょっとテンションあがっちゃった」

「いいや、構わないよ。こっちもちょっと驚いちゃったぐらいだから」


主に胸の大きさについてだが。
ありがとうございます!ありがとうございます!当分オカズには困りません!
そんなことを心の中で思いつつ、つとめて冷静に僕は彼女に話しかける。


「それで、今日僕らが来るのは叔母さんから聞いてなかったのかい?」

「うん、にぃにが来るとはお母さん言ってたけど今日とは言ってなかったよ」


しまった。日にちを間違えたか?
いやでも昨日確認したはずだが……。

叔母さん勘違いしてたのだろうか?


「そうか……じゃあ部屋とかも準備できてないかな……」

「そんなことないよ。今は使ってない診療所の個室を二部屋使ってくれれば良いってさ」

「あ、そうなんだ。でもなんで二部屋も?」

「なんかお母さんが『若い男の子二人だし何かと個室が入用だろうしね。うふふふふ』って言ってたよ。
 何かあるの?」


あの妖怪女狐め。なんてことを自分の娘に吹き込んでやがる。

そんなことを言えるはずもなく、「あはは。な、なんだろうねぇ」と茶を濁す。


冬華ちゃんに連れられて僕らは自分たちの部屋へと案内された後、彼女は自室へと戻っていった。
その後、長谷川のボディブローを皮切りに、男たちの醜い争いが展開されたことは言うまでもないだろう。
そして様子を見に来た冬華ちゃんが泣きそうな顔で仲裁に入ったのはまた別のお話である。

夕方になり、自宅のほうへとやってきた叔母さんからは謝罪を受けた。
なんでも電話に気づかなかったとのこと。
そんなに診療所のほうが忙しかったのかーと一人納得していたら、
冬華ちゃんが耳打ちをしてきて、
『診療所は暇だったけどお父さんといちゃついてて気づかなかっただけだよアレ』
と教えてくれた。

やはりクソババアだ。歳を考えて行動しろ。
などと考えていたら突如背筋に悪寒が走ったのでそれ以上は考えないことにした。

長谷川はというと叔母さんに見惚れていた。
いや確かに、叔母さんは年の割には綺麗だと思う。
だが、一児の親であり、何よりも人妻だ。
こいつはわかっているんだろうか。

とりあえず面倒には首を突っ込みたくないので長谷川のことは放置しておくことに決めた。

叔父叔母に一通りの挨拶を済ませ、晩御飯のカレーを頂く。
うまい。なんでもとれたて野菜を使った夏野菜カレーだそうだ。
この汗をかくぐらいの辛さが何よりもたまらない。

僕も長谷川も遠慮など知らずに何杯もおかわりしていた。

食べた食べたと満腹になった腹をさすっていたら、叔母さんがこっそりと話しかけてくる。


「今日の晩御飯、実は冬華が作ったのよ。あの子、結構料理上手でしょ」

「そうだったんですか?結構どころかかなり上手だと思いますけどね。美味しかったですし」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。どう?あんな子を嫁にほしくない?」


何言ってるのだこの女狐は。
もしや今回の申し出それが目的だったのではあるまいな。
などと一瞬のうちに考えていると、


「よよよ嫁だなんて!何言ってるのよお母さん!」


と烈火のごとく顔を赤く染めた冬華ちゃんが話に割り込んできた。


「あら~?冬華もその気なんじゃなかったのかしら~?」


などとニヤニヤと叔母さんが囃し立てる。


「そ、そういうんじゃ……ゴニョゴニョ……もうしらない!」


そう言って冬華ちゃんは皿を投げだし、自室へと戻っていった。
長谷川からは殺意の視線を向けられている。やはりこいつは殺すべきだ。

(続く)
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